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第37話 魔王からの招待状

Author: 青砥尭杜
last update Huling Na-update: 2025-02-28 20:58:50

 セルシオに先導されて移動した執務室へと入室したカイトたち三人は、セルシオにすすめられるままソファへ腰掛けた。

 重厚なデスクの上にあった一通の書簡をセルシオは手に取ると「セナート帝国からの招待状です」と言い添えてカイトに手渡した。

「セナート帝国? 招待状、ですか……?」

 オウム返しに仮想敵国の名を口にしながら、カイトは書簡に目を落とした。

「カイト卿の聖魔道士および太魔範士、その授与を祝賀するセナート帝国主催の晩餐会への招待状です」

 カイトは書簡の文面にざっと目を通した。

「これは……赴かない訳にはいきませんね……」

 顔を上げたカイトが感想を口にすると、セルシオは首肯を返した。

「左様です。セナート帝国と我がミズガルズ王国は現在、正式に国交を回復しております。読んでいただいた通り、シーマ皇帝の署名が入った正式な招待状です。これは、断れません」

「……それにしても、急ですね」

「ええ、さすがと言うべきでしょうか……セナート帝国の動きは常に早く、その速度で大陸の覇権を手にするまで勢力を拡げた国です。併せて、新たな動きも確認しております。先月にはピャスト共和国と、そして今月に入ってはロムニア王国とセナート帝国は停戦協定を結んでおります。オルハン帝国とも水面下で交渉中なのは確実でしょう。近く、西方戦線の緊張が一旦とはいえ解ける形となります」

「それは……ミズガルズにとって吉報なんでしょうか……」

 カイトの不安を隠さない問いに対し、セルシオは一呼吸置いてから答えた。

「実際の距離も形成されてからの経過も長い西方戦線に初めてとなる停戦の動き、となれば次に緊張を強いられるのは、南のヒンドゥスターン帝国。そして、東南エイジアに勢力を伸ばしたブリタンニアの統治領となるでしょう……今は見守るしかありません。現在の情勢下にあってミズガルズ王国としては、静観の一手しか打ちようがありません」

「そうですね……では、俺は招待に応じてセナートに赴くとします」

「はい。お願いいたします」

 決意を口にしたカイトへ軽く頭を下げたセルシオが視線をセリカとステラへ移す。

「セリカ卿、ステラ卿。引き続きセナート帝国へ赴くカイト卿の護衛の任を引き受けていただきたい」

「承知しました」

 セリカが即答すると、ステラは質問を返した。

「日程はどうなりますか」

「招待状に添えられたもう一通の書簡によると、明後日には案内役としてラブリュス魔道士団の第六席次であるシルビア卿が、プログレに到着する予定とのことです」

「シルビア卿が!? それは、また速いですね」

 素直に驚いてみせたカイトへ、セルシオは視線を戻した。

「シルビア卿を、ご存知ですか?」

「聖皇国で称号を授与された直後に一度、会ったんです。皇帝シーマからの使者ということでした。その際に、皇帝からこの指輪を……」

 カイトが左手を軽く挙げて手の甲をセルシオに向けた。左手の中指に着けた指輪が輝くのを見たセルシオは、蠱惑的な照りを帯びるピジョンブラッドをまじまじと見つめた。

「これは、見事な紅玉ですね……そうですか……」

「セナート帝国の……いや、皇帝シ-マの真意は、どこにあるんでしょうか?」

 カイトの問いに対し、セルシオがあごに手をやり思案の表情を見せる。

「真意は測りかねます。ただ……カイト卿もお察しのとおり、額面通りの祝賀だけではないでしょう……」

「……実際に足を運んで、この目で見極めるしかないですね」

「はい。それしか手は無いかと」

「分かりました……魔王の真意を、この目で確かめてきます。可能であれば父の身柄についても……」

「お願いいたします」

 カイトに向かって軽く頭を下げたセルシオが、セリカとステラへ視線を移す。

「セリカ卿、ステラ卿。護衛の任、しかと頼みます」

「お任せを」

 ステラが即答すると、セリカも強い眼光に決意を含ませながら答えた。

「この身に代えても」

 ステラとセリカがセルシオに返答するのを聞いたカイトは、無言でうつむき指輪に嵌め込まれたビジョンブラッドを見つめた。

 ピジョンブラッドの紅い輝きが何かを暗示しているようにカイトは感じた。

 その何かが不穏なものであることは避けられない気がしたカイトの脳裏に、ストーリアの笑顔が浮かんだ。

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